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エコ・カルチエ

2020年3月11日 ツールーズ

 Tramのあるフランスの街を訪ねている。全都市制覇が目標ではあるが、まだ、6割くらいだろうか。「すべての終点を訪れる」という以外にルールはない。私はこれを「終点探索」と呼んでいる。すべての終点に行けば、必然的に路線のすべての区間に乗ることになると思っていたが、大きな都市の5,6本の路線が交差する町では、同じことではない。分かりますよね。

 

 ある時、終点には、総合病院、大学や高校、サッカー場、アパート群、といった街中にはなくてもいいが、街の暮らしにはなくてはならない重要な施設が多くあることに気づいた。終点は当然交通結節点でもあり、郊外の国鉄駅や郊外へ向かう乗換のバス停があったりするが、Tramの整備工場が近くにあることが多いようにも思った。案外車窓からは気づかない時もあるので、終点付近での探索(彷徨の方が正しい)も大事だ。

 

 終点とは限らないが、もう一つ気になるのが、電停付近での街区の再整備だ。エコ・カルチエ(環境配慮型街区)である。木や石を積極的につかう。生ごみは庭に捨てるか、集めてバイオマスでエネルギーに変える。暖房は街区ごとに集中管理する。緑を多く取り入れる。などなど、地域全体で連帯して町を作っていくらしい。

 

この日も、最後の終点を制覇し、近くにある整備工場も確認した。大満足で、帰りの車窓から風景を楽しんでいたら、面白い建物が立ち並ぶ一角があり、寄ってみたくなった。間違いなく、エコ・カルチエだ。湿地だったと思われる草原の向こうだ。

 

自治体と事業者(公団や建設会社など)が協力し、国の認証を受け、専門家の指導も受けつつ、事業を進めていく。小さな街区ごとに、建築家が、まとめて設計するので、面白い(あるいは唖然とするような意外な)住宅群が出現する。

 

 写真は、電車からは、見えない、ある奥の通りの様子。特徴のある木造の建物群だ。きっと室内の保温効果を考えたものだろう。実に細長い「ウナギの寝床」のようなプランである。奥には、同じくらいの大きさの庭があり、その先(勝手口?)に車庫がある。

歩いていて、奇妙な感覚に襲われる。新しい街なので、仕方のないことのようではあるが、暮らしの匂いがまったくしない。2軒目のお宅の玄関には、緑があり、それだけが何となく、ぬくもりを感じるが、窓もなく、入り口もよくわからない正面が延々と続くので、好きにはなれない。

 

 もちろん徐々に暮らしが定着し、人々の交流が活発になれば、建築家が思いつかなかったような道路の使い方や建物の個性を出すための工夫も出てくるだろう。10年後にもう一を来てみたいと思ったのは初めてのことである。